1023年10月後半 屋敷

属性世代、最後の一人、風星が倒れてしまいました。

10月後半です。前半、焦りの忘我流水道編もよろしくね。


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111ヶ月…男子最長です。

例え勇姿録に載らなくったって、僕はずっと覚えてる。

汐日より二か月、天火より三ヶ月多く…圭月と同じだけの時間を、彼は生きました


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もふもふなご両親から生まれた当家初の大筒士、風星。

『イツ花と気の合うバーンとぉされた方』って紹介されたのに、心の火も風もバーが低くてどういうこと?!となりました。

当時も言いましたが、穏やかな優しさが似ていて、バーンとぉはただ良い言い回しが思い浮かばなかっただけだと思ってます。後、人に尽くそうとするところも似てる。

夢を刀鍛冶だと言ったのも、継承刀を貰った汐日のためでした。

これが後々のフラグになると誰が思ったか…いやほんと…


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早急に心の火と土にお別れを告げた風星は冷静に、しかし慎重になりすぎない判断を下す子です。

萌子を覚えるのに苦労する程に、技の伸びが悪かったです。風星自身そのことをすぐに把握し、進言は物理攻撃が多かった。

怯えるように符や鏡ではなく、自分はフィジカルが強いからと進んで攻撃、あとは防御進言をしてくれました


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生涯散弾しか持たなかったんですが、命中率は7割くらいだった風星。

でも、敵が単体だったり、後世代の育成時はそこまで外さなかったのを見ると、もしかしたら信頼の上での外しだったのかなぁ…と。

散弾で陽動をさせて、その間に他三人に攻撃してもらうという作戦(システム的に陽動はないとかは気にしない)


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捨丸戦前月から風星は急に心水の成長が緩やかになってしまいました。

当時は捨丸戦へ覚悟をしているのかな?と思いましたが、もしかしたら嫌な予感がしてたのかもしれない、と今にして感じます。

扇の指南書取れて、春菜取れて、速鳥取れて、順調すぎる歩みに僕は得も言えない不安を覚えておりました。…風星も、そうだったのかもしれない。


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捨丸敗走時、一番いつも通りに過ごしていたのは風星です。

でも、一番心にしこりを残していたのではないか…とも感じました。

元々誰かのために何かをするのを惜しまない男です。

でも誰でもよかったとも思ってました。町の人にも家族にも特別な感情はなく、誰でも助ける人だと。


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でも、捨丸戦で敗走し


青白い肌で虚ろな目をする圭月を見て

全てを拒絶するように塞ぎこむ天火を見て

屋敷から飛び出した汐日を見て

風星はハッとしたんです。


なにもできない、って。


本気で崩れかけそうな家族にどうしたらいいのか分からなかった。

誰にでも都合のいい言葉と行動は、深い深い底に沈んだ人たちを見つけることすらできなかった。


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感じていた嫌な予感も、家族のことをもっと真剣に考えていたら伝えられたのかもしれない。結末は違ったのかもしれない。

中途半端な気遣いで接していた自分が悔しくて、風星は安心を与えるためにいつも通り笑っていながらも、もっと深く家族を考え始めたと思いました。


その結果が圭月に選考試合や髪戦の後押しをすること、天火と同じ女神様との交神すること、次世代の討伐に進んでついて行くこと。

そして、汐日と共犯者になることでした。


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言い出したのは汐日だと思います。

でも、やりたいと思ったのは、間違いなく風星の心です。

そしてたぶん、深く家族のことを考えていなければ、風星は断ったと思います。

あまりにも残酷で、自己満足のようなやり方。

意思を通すにしてももっと穏やかな方法はいくらでもありました。

でもそうではなく、継承刀に呪いをつけることを選んだのは、汐日と風星のエゴでしかない。


…そんなエゴを突き通したいと思える程、汐日の心に触れられた風星が、己の心を理解した風星が、僕はとても嬉しい。


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誰かの…いや、大切な人の心に触れ、その大切な人に何を思っているのかという自分の心に触れ、行動をすることは、不特定多数の誰かに優しくするのより難しく、でもとても心地よいと風星は知りました。

大切な人にもしかしたら影響するかもしれない一挙一動が怖い。でも、もしそれがほんの少しでも救いになるのなら、どうしようもないほどに嬉しい。


…それが幸せだと思ったからこそ、僕はたぶん風星のこのひと月を想像できなかったんだ

誰でも良かった人生を、汐日に、圭月に、天火に深く関わることで豊かにした風星だからこそ。



出来る事はした。後は、悲しませないように綺麗に消えればいい。

なのに、今までと違うひと月多い生は、今後の寿命も不鮮明にしてしまう。

ひと月伸びたと言っても、呪いに蝕まれることは変わらないのに…自分が生きたことで、自分たちは健康度が下がって何か月で死ぬのか…子どもたちを不安にしてしまうんじゃないかって。


せめて最後はいつも通り、笑って去りたいと思った風星

倒れた自分の元にやってきた四人の顔は暗い。…しかもその暗さは、風星が倒れたからというだけじゃないように思えた。


大丈夫ですか

と掠れた声で聞いた風星に、誰かが答えた。


力を持った一族が

鬼に近づきすぎたら、いつかあの親王みたいに鬼にされてしまうのか

人に近づきすぎたら、いつかあの人魚みたいに食べられてしまうのか


呟いたのは誰なんだろうか。

恐怖が溢れ出た結果なのか、確認せずにはいられない性なのか、たたの疑問として口にしたのか、興味本位なのか。


風星にはもう分からない。でも、自分がなぜこのひと月を生きたかだけは理解できた。


この子たちがちゃんと前を向けるように、まだここにいるんだと。


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…このために、これだけのために風星は今月まで生きたんだ……

これ以上の何も聞くことができない。だけど、本気でそう思いました。


風星はやっぱり、大切な人の背中を押すために生きてきたんだね…


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親王の話を聞き


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真名姫に会ったからこそ陥った不安。


それを優しくすくってあげるのが風星ができる最後のこと。


一族の血は、朱点童子と同じ血かもしれない。

神様に浸って人から遠い血かもしれない。


それでも、薄く、遠くなっていても、自分たちには日月星辰の、そして宙の血が全員に流れている。

それを、風星は信じて欲しいと最期の力を振り絞って笑う。


分けあい歩んできた血は絆となって、今、隣にいる

一人という不安、一人では倒せない敵、それも家族と共にならば、打ち勝てるかもしれない

打ち勝てない時でも血を繋げば、子孫たちが打ち勝ってくれる。捨丸の時みたいに


天火くんが言っていたでしょう?


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人は何かをやるために産まれてくると。それを鬼斬りにおいても、他においてもいい。


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圭ちゃんさんが言った、一人一人の戦いというのは鬼斬りのことじゃないんです。自分の人生との戦いだ。


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汐日ちゃんさんなんて、己の人生に勝つために全員を巻き込んだ。そうまでしてなしたいことなら、そうすればいい。


どんな手を使ってでもいい、それに勝ちなさい。

そして勝つためには、信じなさい。自分を、同じ血を持った仲間を。

…生まれた時から傍にいる血を分けた仲間の存在を、どうか幸福に思ってください。



そう言い切れるのは…風星の人生が幸福で、大勝利だったからだと思います。


夜星から生まれ、天暮と日昼に戦いの仕方を教わって、

汐日の悪だくみにつき合って、圭月にずっと仕えてきて、天火と最後の出陣が出来た。


日雨たちの討伐の付き添いをして、戦うという家の意味を継げた。

雪月に刀鍛冶を教えて、討伐以外で面白いと思ったことも継げた。


そんな人生を風星は振り返り『中々の大勝利ですね』といつも通り、穏やかな顔で笑うんだ…。



きっと、家族にも己にも向き合わなければ言えなかった。

そうでなかったら、神様の力を継いでいけという意味にしか思えなかっただろうな。


普段二段階で終わる男の子が三段階も持つと、ここまで苦しそうなのか…って感じの途切れ途切れの声でした…。

そうまでしても伝えたい言葉なんだと思いました。


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お疲れ様、風星。大丈夫、星雹くんたちは…大丈夫だよ。


汐日は『来世など分からない』と言ったけれど、圭月も、天火も、風星も、来世を信じています。

そして…いつか、どこかでまた会えることを、望んでいる。


三人で汐日を迎えに行こう…そのためにきっと、三人は人として生を終えたんだ。


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※左上のロゴはネズ様(@nzeenz_orsk)に作っていただきました。ありがとうございます。


属性世代、これにて終幕です。

天気世代はこれからどんな血を紡いでいくんだろう。

よければ、最後まで見てやってください。











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