【小説】日月星辰の名に誓う

『辰』  名を呼ばれるだけで幸福なのだと気づいたのは、自分の足で立ち、もう二度と動くことのない父の体を見下ろした時だった。生まれた時からあった当たり前は、当たり前なんかじゃないと、突きつけてきた現実はあまりにも残酷で冷たかった。 俺の名を愛しく呼んでくれる人はいない。俺を温かい腕で抱いてくれる人はいない。代わりのように俺の名を呼び、俺を抱き上げるあいつは、父と母を奪った鬼自身だ。 憎くて憎…

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【小説】日月星風星

盛大にフレンドリーファイヤーしてるので、苦手な人はお戻りください。汐日の刀に呪いをつけた話。 「頼む」  子どもたちの出撃を終え、帰ってきた自分に汐日ちゃんさんが誰にも聞こえないように小さな声で言った。 門前で戦果や戦況を確認している会話が飛び交う中、声は自分にだけ届いてすぐに消える。  自分と汐日ちゃんさん。二人でずっと悩んでいたことがあった。 完全なる自己満足で自己完結な計画。誰かのた…

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【小説】日月星天火

1023年6月相翼院帰還後、7月白骨城出撃前  日雨ちゃんの考えを聞き、僕の心もまとまった。 重心が安定しない体を引きずりながら、圭ちゃん様の部屋に行く。するとそこには先客、風くん様がいた。 「あっ、すみません…! 声をかけるの忘れてましたっ」「あら、いいのよ。内緒話なら部屋の戸を開けたまましないから」「自分の話はちょうど終わりました…けれど天火くんにも話があったので、問題なければまだここに…

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